近年、農に対する新しい取り組みが増える中で、「農業体験研修」というものが増えてきているらしい。なぜ、企業は「農」を研修の手法として取り入れるのか。その背景を探ってみた。
農林水産省も推奨する、企業の「農業体験研修」とは?
以前より、山間部でのキャンプなど、オリエンテーションにより自主性や創造性を高めることを目的とした企業研修は少なからず行われていた。
少し風変わりなものだと、忍耐力と達成感を得るためなのか、自衛隊の体験入隊などを取り入れる企業もある。
では、農業体験を企業研修に取り入れることは、ビジネスにどのような関係があるのだろうか。
その答えの一部を、農林水産省が示している。
農林水産省のHP内には、農業体験を企業研修で行うことを推奨した一文がある。
「農業体験を企業研修に取り入れることで、チームワークやリーダーシップの向上、環境理解など様々なものを得られる」とのことなのだ。
確かに、オフィスを飛び出して、いつもとは違った環境下に身を置くことで、新たなビジネスアイデアが生まれるきっかけになるかもしれないし、農体験を通じた社員のふれあいで、違う部署同士の交流が生まれるのかもしれない。
農業体験を取り入れることによって得られる企業側のメリットはどこにある?
では、具体的な企業側のメリットには、どのようなものがあるのか。
まず、未経験者が多いと思われることから、適応能力の向上がみられるだろう。
さらに独自性や協調性などをベースにし、作業効率の向上を試行錯誤することから、責任感やリーダーシップの向上も期待できる。
これらはビジネスにおけるマネジメントの根本だ。
プログラムによっては、収穫したものでの自由調理や商品企画なども行うことができる。ここでも、与えられたものの良さを如何に引き出すか、ブランディング力が試される。
ビジネス的な側面以外にも、農業体験に参加することで、団結力も高まる。
実際に取り入れる企業には、農業とは無縁な「IT企業」の参加が多いとの報告がある。自然と触れることで秘められたクリエイティブ性が刺激されることを期待したり、社員だけでなく役員も参加することで、ボトムアップしやすい関係を築けるというメリットがある。
企業研修を受け入れる農家のメリットは何?
企業研修を受け入れる農家や団体は、各地にある。
そこで気になるのは、農家にとってのメリットだ。
純粋に農作業ボランティアとして受け入れる農家もあれば、農業体験プログラムとして成立したものを用意している農家・団体もある。
一時的にでも人が増えることで、作業効率の向上につながる。研修規模によっては、研修費用も収益になるだろう。では、その他に農家は何を得るのだろうか。考えられる範囲でまとめてみよう。
まず、農業や生産物のアピールをすることができる。企業が農業研修を実施したことを発信すれば、PR戦略としては個々で行うよりも効果的だろう。また、企業研修が実施されることで、指導者の立場として農作業や理念のマニュアル化が必要になるため、農家自身の運営見直しになる。
また、個人農家だけでなく、地域の農家が連携して企業研修を受け入れることもあるため、地域活性化にも繋がるだろう。
このように、「農体験研修」を実施することは、企業・農家の双方にメリットがあることがわかった。
普段の生活の中で、「農」を意識することは極めて少ない。
きっかけが「企業の研修」であったとしても、それを起点に少しでも「農」に対する関心が高まることが、アーバンファーマーへの一歩かもしれない。