世界第2位の農業大国オランダが実証する「農業×IT」という可能性
現在、日本の食料自給率は減少を続けている。そのため、輸入に頼らなければ成り立たない状況になってしまった。この日本の自給率の問題は、農業の衰退がひとつの原因といわれているのだが、なぜ日本の農業はここまで落ちこんでしまったのか。
それは農家の高齢化と後継者不足が大きな要因であり、若者の農業離れはどうしたら止められるのかが大きな課題となるだろう。
そんな中、日本の見本となるであろうモデルケースがある。それは、世界第2位の農業大国オランダだ。オランダは国土面積が狭く、日本の50分の1しかない。日本と比べ平地が多いことはあるが、日照時間は短く、国民人口自体も少ない。そんな悪条件の中、世界第2位まで上りつめたオランダが実践したのは「スマートアグリ」という、徹底した『農業のIT化』だ。これは、農業の持つ「きつい」「汚い」というイメージを払拭した、新たな改革になるだろう。
スーツ姿でパソコンを片手に働く『農業』。スマートアグリは、日本で問題視されている“若者の農業離れ”も変えられるかもしれない。
「体力勝負」「汚れる」農業から、スマートに働く農業へ
かつてオランダは日本同様、農業が危機的状況に陥ったことがある。1986年、EUの前身ECにスペイン・ポルトガルが加盟し、オランダよりも恵まれた環境である2国におされ、危機的状況に陥った。そこで再起を図った取り組みが「スマートアグリ」だ。
現在、オランダの農業はハウス栽培が主流になっている。温湿度・品質などの生産関係が全てコンピュータで管理されている。オランダの生産者は、朝から畑ではなくオフィスに向かう。スーツ姿で颯爽と歩く姿は、農家というよりは会社員である。オフィスではパソコンを前に栽培に必要な項目をチェックする。ハウスに向かって作業を行うことはまずない。
栽培に必要な情報は全てパソコンで管理されており、温度や水やりなど『一番快適な環境』を24時間守られている。
完璧にIT化されているこのスマートアグリは、「きつい」「汚い」という農業のマイナスイメージを変えることができるだろう。
安心・安全・安定して消費者へ届けられる
スマートアグリによるIT化は、何も生産面だけではない。流通から販売までをトータルで管理する農業クラウドも注目だ。
安心・安全、そして安定して消費者へ提供されるというのは農家にとっても大きなプラスだろう。農業に必要な情報を全てデータ化し、コンピュータで管理すれば、最終的には素人でも農業ができる時代がやってくるのだ。これこそが“若者の農業離れ”を止めるのではないだろうか。
「スーツ姿でクールに働く」、農業のイメージが180度変わりそうだ。