後継問題、物価の上昇、都市部への人口の集中など、様々な課題を抱える農家を救うために、一番大事ことは、実は、「食べる」こと「買う」こと。

本トークセッションでは、モデレーターにMODOC 上野アキト⽒。
横須賀市市議会議員、株式会社マチノベ COOの嘉山 淳平氏。
アラフォーに特化したイベント/企画集団“Mirroir(ミロワ)”代表の渡辺 雅美氏。
“自分自給率を上げる”を目指し、マルシェを開く、佐藤 容紹氏。
ブロ雅農園&鈴木浩之農園にて環境保全型農業を営む、鈴木ブロ雅氏の5名を迎え、都市における農の買支えについて、トークを繰り広げました。

今日は、その模様をお届けします。

 

上野アキト(以下、上野)

今回のテーマは「都市における農作物の買い支えの重要性」。非常に重いテーマなんじゃないかと思いますけれども、よろしくお願いします。
農に対して一生活者に何ができるんだろうっていうところを、考えていきたいなと思います。まずは簡単に自己紹介をよろしくお願いします。

 

嘉山淳平(以下、嘉山):

先ほどご挨拶させて頂きました、横須賀の市議会議員の嘉山です。あとは16Startupsという会社を立ち上げています。ソレイユのある長井という町で生まれ育ってきました。
嘉山っていう苗字意識していただければ「嘉山院」「嘉山農園」というふうに長井には100個くらい長井にはたくさんいる苗字なんですね。
よろしくお願いします。

 

佐藤容紹(以下、佐藤):

はい、こんばんは。Free farmの佐藤容紹です。本業は金融関係をしていますが、農業や生産業などが大好きで、その魅力をもっとみんなに知ってもらいたくて「Free farm」というイベントを作って活動しております。
よろしくお願いします。

 

上野:

もうちょっと、Free farmってなんですかっていうところをきいてもいいですか?

 

佐藤:

今から約10年くらい前ですかね。東京の人たちは、こんなに美味しい野菜農家さんを知らないんだ、こんないいものをっていうのを思うことがあって。それを知ってもらいたいなって思ったんです。

でもその野菜は、スーパーにあるものと違って、大量に生産されるものではなく、みんなで支えていかなきゃ作っていけないものだった。
僕が農家さんの代わりに作ることはできないですから、あんな大変なことはできないです。だから自分たちの食べるものを農家さんから「直接」買えばいいんじゃないかと思って。

日本の自給率と言った難しい話ではなく、「自分の自給率」をあげることで、農家さんとコミュニケーションとれて日本って色々変わっていくんじゃないかなって。そんな思いつきから、自分たちの自給率をあげるっていうコンセプトで活動を始めました。

上野:

自分自給率っていう言葉はちょっとおもしろそうだなと思ったのでまた聞かせてください。
はい、では続きまして渡辺さん、よろしくお願いします。

 

渡辺雅美(以下、渡辺):

初めまして。株式会社mirroirの渡辺雅美です。
私は今、色々な商材のブランディングの会社をやっているんですけれども、もともとファッション誌の仕事をしていました。そのため、食べることの重要さ=きれいになることだということに気づいて、どこから出てきたものを食べているのか考えるようになりました。

そんな時に、たまたま隣にいらっしゃる佐藤さんと出会ったんです。そして1年くらい前に「マルシェ」を始めました。今、皆さん召し上がっているものも、マルシェの食材がたくさん使われていると思います。野菜につけるものやお肉のスパイス等も作っています。
皆さんが野菜につけて召し上がっている味噌もマルシェのものです。

 

上野:

味噌、めちゃくちゃおいしかったです。皆さん、今食べてるものを作っている人たちが今話しているということを、ぜひ意識していただきながら、お食事とトークをお楽しみください(笑)。

そしてもうお一方ですね、農家の方来ていただいております。鈴木プロ雅さん、よろしくお願いします。

 

鈴木ブロ雅(以下、鈴木):

皆さん、初めまして。ソレイユの丘から見える場所に家がありますし、見えるところに畑もあります。
そしてここ、ソレイユにある野菜の直売所の代表もしてまして、ちょっとお話をさせて頂きたいと思います。よろしくお願いいたします。

 

上野:

よろしくお願いします。それでは、おひとりずつ話をうかがっていきたいなと思います。まずは先ほど気になる言葉として上がった「自分自給率」という言葉について。「自分自給率」という言葉、ちょっとよくわからないので、ぜひ掘り下げてご説明していただきたいと思います。

 

佐藤:

先ほどもお話ししましたが、自分で食べるものくらい、どこの誰が作っているのかわかるようにしようよ、ということです。
皆さん仕事していますよね、消費者には「買う」というすごい役割があるんです。誰が作っているものか分からない状態で食ベるよりも、自分で玄米を仕入れて全部知り合いから取り寄せていたりするとすごく安全だし、それが自給率につながっていく。
顔がわかっている農家さんを評価するという面で消費者の役割もものすごく大きいんです。

 

上野:

なるほど。みんな物を買うっていうことに対しては、デザイナーさんが誰だとか、どういった経緯で生まれたとか、気にすると思うんですが、食べ物って確かにあまり考えないなあと。

 

嘉山:

身近にありすぎて、当たり前に生活してしまっているのかもしれませんね。確かに、あまり経緯を知らないものって「食べ物」かもしれないです。

 

上野:

この辺りの話では、テラスマルシェ自体をどういった場所で、どういった目的で開いているのかを知ることで、見えてくると思うので、渡辺さんからお話伺いたいと思います。

 

渡辺:

本当に食べたいものをコツコツ集めて、まあ食べ物だけじゃないんですけれども、あったらいいなあっていうものをあつめてみたら、自然と今のテラスマルシェができたという感じですね。
今は広尾で定期開催をしています。

テラスマルシェに来ると、売っているものを作っている方がいらっしゃって、実際に作り手が説明するといったコミュニケーションが楽しめます。「今月は何?」ってお客さんが聞いてくださって、目的がなくても来てくれるようになって、安全で顔が見えるものを求めて、人が集まっている印象です。

 

上野:

では農家さんも、食べる人の顔を意識するものなのか。ぜひプロ雅さんにお話伺いたいと思います。やっぱり農家さんっていうのは先ほど佐藤さんがおっしゃったように食べる人、買う人の顔っていうのは意識するものですか?

 

鈴木:

今までは、実はそういうのはなくて、出荷してそれでおしまいだったんですよ。なので消費者の顔っていうのはずっと見えない。
とにかく大量に作るっていう面では重要だったんですが、最近は少し変わってきています。三浦半島に若い世代どんどん入ってきているんですよ。

私は今、農家をやっているんですが、その前は11年間農業高校で教員をやっておりました。その中で、後継者育成をやっていたんですけれども、地元の農家の子よりも「都心部」から農業をやりたいといって、わざわざ通ってきてくれる子達がいたんです。川崎とかお台場とか、かなり遠くから2時間半くらいかけてきてくれるんですね。

なので、「農業をやりたい」今の若い子たちは、マルシェとか直売所とかそういう、農と触れ合うところがたくさんありますので、そういうのを通して消費者と触れ合うことでよりやる気になるっていう流れになっているのかなと思いますね。

 

上野:

なるほど、作り方売り方は変わってきていると感じますか?

 

鈴木:

農業に正解はないと思っているので、いろんなやり方があっていいんじゃないかなと。いろんな農業があって、やり方に正解はなく、とりあえずやってみることが大事だと思います。
頑張って農薬を使わなくても使っても、どっちが正しいなんてことではなく、消費者にはうまく伝わらないのが現状なんですよね。マルシェに出しているものは農薬を使っていない。農家にとってはあたりまえなことなんですが、消費者が知らないことってたくさんあるんですよね。

 

嘉山:

先ほど消費者が知らないという話がありましたが、「生産者」のことを考えてくれている人は絶対いると思うんです。テラスマルシェさんがそうであるように。ファンを是非とも獲得していきたい。それによって作り方、売り方は変わってくるのではないかと思います。

 

上野:

確かにそうですね。地元の農家、まさにここ、ソレイユの丘だったり、テラスマルシェさんだったり、農家さんを支えていく仕組みが実際にあるんですよね。

 

嘉山:

支えていく仕組みという意味では、横須賀にいる若手農家もそうですね。たくさんいるんです。ソレイユの丘にも若手農家が作物を出していて、年間70万人の人たちが来てくれている。
まさに今日のように農業体験をして、帰りに地元の野菜を買ってってくれるような人たちです。

これまでは農協が出荷して値段を決めてというのをやっていたのを、ソレイユの丘やマルシェでは、農家ができる。その時の出荷状況に合わせて得ることや値段設定ができることが支えていく上でも重要だと思っています。

 

上野:

アーバンファーマーという言葉について、今一度考えてみたいなと思ったんですが、買い物に行くこと、口コミを聞いて行くと言うのは、普段から誰もが気づかぬうちにやっていることなんですよね。

皆さんのお話を聞いていると、「農」の存在が自分の生活にすごく近い気がしました。
作り手の顔が見える、買い手の顔が見えるという、「新しい農の買い支え」を生み出す場を作るのが、アーバンファーマーなのかもしれません。