- 農業男子 vol.2 -
東京から新規就農!
若さと勢い溢れるジャニーズ系農家! 編
「大学中退。20万円と自転車を持って東京から縁もゆかりもない宮崎へ。そして就農。」
なんとも骨太なストーリーである。
一体なぜ?!なんのために??
それほど彼を突き動かしたものは何だったのだろうか。
体育会系の農業男子を想像しながら取材先に伺うと
迎えてくれたのは意外にも柔和でチャーミングな農業男子だった。
■手元にあるのは、20万円と自転車。たったそれだけだった。
「こんにちは、たいぴーです」
?!!!!
い、い、いちご!??
「あ、これ、自分のいちご園のオリジナルで作ったんです」
いちご色のつなぎに、いちごの帽子。
その発想が可愛い。そして超絶似合ってる。そんな姿に、キュンッ。
これが・・これが母性をくすぐられる、というものなのか!( *´艸`)
屈託のない笑顔で出迎えてくれた“たいぴー”こと渡邉泰典さん。
東京からここ、宮崎県・北郷町に移住して3年目。
1年間の修行を経て、去年3月、自身のいちご農園「くらうんふぁーむ」を設立した。
「くらうんふぁーむという名前には3つの“きてん”という意味があるんです。
いちごの軸の部分をクラウンと言って、葉っぱや実を展開する一番“起点”となる部分なんですね。もう一つ、クラウンは道化師という意味がありますよね。それが、喜びを広げるという“喜展”。最後に、宮崎弁で「来てね」は「来てん」と言うんです」
喜びを広げる“起点”であり、みんなが集える場所・くらうんふぁーむ。
くらうんふぁーむ設立までの道のりは決して順風満帆ではない。
「こっちに来た時、手元にあったのは20万円と自転車だけ。風呂なしガスなしテレビなしのワンルームからスタートでした。」
修行をしながらお金を貯め、足りない部分はクラウドファンディングで資金集め。
今、ファームがある場所は、当初ゴミ屋敷と化したすっかり荒れ果てた土地だった。
「だから買い手がつかなかったところで。丁度良かったんです。手間はかけても、お金はかけない、と決めていたので。とはいえ、購入してから2か月間はずっとゴミ拾いしかしていませんでした(笑)」
―――いくらなんでも途中で「もうヤダ!」って投げ出したくなりませんでしたか?
「逆に面白いなって。ネタになるなって。こういった経験、なかなかできないので(笑)」
そう笑うたいぴーさんは、間違いなく骨太な農業男子だ。
◆農業は表現。農家は畑のアーティスト
就農して3年目。
去年はクラウドファンディングで“いちごの先行販売”を実施した。
「独立したものの、いちごは12月から収穫なのでそこまで収入がない。どうしようかなって考えて先行販売をしようと決めたんです」
どんな状況になっても今、自分に出来ることを考える。
何事もアイデア次第と行動次第。
たいぴーさんのチャレンジ精神はいちご作りにも生かされる。
「最初は、“何がわからないのか”がわからなかったんです。それがだんだん理解できるようになってきて。今年は“美味しさの根拠作り”。いつでも一番美味しい、完熟したいちごを届けられるようにします!」
―――そもそも農業に興味を持ったきっかけは?
「大学2年の時にサークル活動で千葉県のお米農家さんのところへ行って、人生で初めて田んぼに入ったんです。で、そこでびっくりしたんですよ!農家さんによって全然田んぼの表情が違うんですよね。同じものを育てているのに、なんでこんなに違うんだろうって」
「畑や田んぼにはその人のこだわり・・・思想や哲学がそのまま現れるんだなって。
その時に農業は表現。農家はアーティストだなって思ったんです。」
田んぼを、畑を見ればその人の事が分かる。そこに面白さを見出した。
◆「大学辞めて、宮崎行って、農業したい」
大学生の時に縁あった北郷町の地元いちご農家との出会いが
たいぴーさんの運命を大きく変えていく。
――――「大学を辞める」と言った時のご両親の反応は?
「それはもう猛反対でしたね(笑)父親には事業計画書を出せとも言われましたし、
おばあちゃんを説得しに広島にも行きましたしね。
でも、“卒業する”というレールに乗ると自分の中で間違いなく「農業」という選択肢が消えると思ったんです。なんとなく就職活動を始めてしまいそうで。じゃあ潔く辞めて、退路を断とうと。」
金銭的な援助は一切しない。だめだったらさっさと東京に戻ってこい。
それが条件だった。
「自分としては失敗するなら今かな、って思ってるんですよね。今だからこそ出来ることがある。じゃあ、とことんやるぞ!って。とにかくやってみたい。不安よりも好奇心が勝っています」
やるかやらないか。
やらなくて後悔するより、やって後悔したほうがいい。
キラキラ輝く瞳の奥からは並々ならぬ意志の強さが伝わってくる。
◆百姓を輩出する。
たいぴーさんには色々な顔がある。
いちご農家としての顔。
地元の小学校で放課後保育をする先生としての顔。
そして風船パフォーマーとしての顔。
「風船のお兄さん、で覚えてもらえるからいいんですよ(笑)出来るようになっておいてよかった~!」
5月からは中学生を対象とした学習塾も始めた。
「単純に勉強を教える、というよりも勉強したことがどう生かされるのか、を教えたいんです。例えば僕の場合、学生時代に化学を勉強していたことが、肥料の構成を考える時に役立っているんですよね。勉強がどう生きてくるかが分かると、自発的に勉強しようってなると思うんです。」
そんなたいぴーさんには目指す姿がある。
「百姓になりたい。そして百姓を増やしたい。昔は百姓って色々な仕事をしている人のことを指したじゃないですか。農業をしながら医者をする、とか。一人の人がなんでも出来たことが普通だった。今の時代、地方にこそ“百姓”って必要だと思うんです。
人口が減っていく中で一人の役割が増えていくのは当たり前だと思ってて。」
「生きる術を増やしていくこと。肩書関係なく、地域の困りごとをみんなで解決できる、
“現代版百姓”を輩出します!もちろん、いちご作りも宮崎で一番美味しいって言われるように頑張ります!」
最終的に、たいぴーさんがどんなクラウン(王冠)を手にするのか。
行く末に目が離せない。
そんなたいぴーさんのいちごと同じくらい甘~い萌えキュン言葉はこちら↓
☆渡邉泰典さんの情報はこちらでチェック☆
https://www.facebook.com/taipeey
※いちごの先行販売、今年もやります!
☆次回は「原木しいたけの美味しさを伝える、宮崎のベビーフェイス農家を特集!お楽しみに~♪」
(文・撮影・取材・イラスト 名越涼子)
◆名越紹介(プロフィール)
名越涼子(なごし・りょうこ)
フリーアナウンサー。香港出身。
福井、愛知のテレビ局のアナウンサーを経て独立。
幼い頃見た田んぼの美しさに感動し“農”に興味を持ち始める。
農作業着ファッションショーや農業団体の発信媒体を手掛けるなど
独自の切り口で“農”を発信。
他、メディア出演や講師業、コラム執筆など多方面で精力的に活動中。