《しんどい、儲からない、安定しない》からの脱脚!
JAと農家の最強タッグ?!ブランド産地として進化し続けるための選択とは!

 

 

 

こんにちは♪フリーアナウンサーの名越涼子です。
インターネットが発達した今。
どこにいても世界中の情報が手に入るようになったのだけど、
だからこそ「現場に行く」「自分で確かめる」って大事だな~って最近しみじみ思うんです。

なんでそう思ったかというと・・
「JA vs 農家」
これって農業の話しでよく出てくる構図だと思うんですよね。

 

正直、私も分からなかったのです。実際のところってどうなんだろうって。ただ、報道されるのは農家さんの悲痛な声ばかり。

じゃあ現場を取材してみてどうだったか。
私が出会った農家さんたちはそもそも真っ向から対立したいなんて誰も思っていなかったんです。それぞれにいい付き合い方を模索し、行動していました。

 

この意見ってほんの一部なのかもしれないけど、ただひとつ言えることはその関係性もこれからの農業の仕組みも間違いなく転換期に来ている、ということ。
今回登場する岡山県の「総社もも生産組合」はJAとタッグを組むことを選択し、ブランド産地として進化し続けているところです。
JAと農家が手を携えてお互いの強みを生かし合う。こんな心強いことってないんじゃないか・・?!
それでは、ご覧あれ~♪

 

 

あえて、JAと100%取引する

フルーツ王国として知られる岡山県で桃と言えば、白桃。
岡山県総社市は白桃のブランド産地である。
その産地を支えているのが9軒の生産者と5人の研修生からなる総社もも生産組合。平均年齢36歳(若いっ!)4代目組合長は秋山陽太郎さんだ。

 

 

秋山「うちは県内の桃の産地としては小さい。でも小さいゆえにまとまった取り組みが出来るんです」
名越「みなさんのフェイスブックからもチームワークの良さが伝わってきます」

 

秋山「特別なことはしていないんですけど、そう言っていただくことは多いですね。ただ、この組合の先代や先々代ってすごく尖っていて(笑)JAや市場と喧嘩するし個性的な人たちだったんですよね。で、面白いことはどんどん取り組め!って僕らみたいな若手に任せてくれる気質があって」
名越「なるほど(笑)組合全体から活気が溢れているのはそういった背景があるんですね」
秋山「組合が出来てまもなく50年。今は生産地としての土台を強くする段階です」
名越「土台を強くする、というのは具体的に?」
秋山「ひとつは取引をJA100%にしたことです。そうすることでJAのバックアップを望めるようにしたんです。やっぱり物流は強いですしね
名越「うんうん」
秋山「ただ、規格も販売先も普通は決まってるけど、値付けまでもこっちで決められるようにしています
名越「へー!どうやってその関係を築いてきたんですか?」

 

秋山「もともと農家目線のJAで一緒に総社市を盛り上げよう!というベースがあったんですが・・・先ほどの話のように先々代から言うことを聞かない産地だったので(笑)僕らの声を無視できないくらい品質の面で突き抜ければいいんじゃないかって
名越「言葉だけじゃなく実際に行動で示してみせたんですね」
秋山「商取引や物流のやり方を変えてもらえるくらいトップ単価をつけてもらえるようになってきたんです」

 

 

そうしてでも大切にしたかったのは“食べごろ”だったーーー

 

秋山「お客さんのことを見ていないと結局は自分たちの首を絞めるって思ったんです」
名越「と、いうのは?」
秋山白桃は傷みやすいから早く収穫して出荷する、というのが常でした。でもそれって美味しくない。やっぱり食べごろで出荷したい
名越「熟れた時の味わいって驚くほど違いますもんね。あ~これが本当の美味しさか~!って」

 

秋山「ですよね。そんなお客さんの喜びが対価になる仕事をしたいなって思ったんです。でも商品として届いた時に傷んでいたら意味がない。それに経営のバランスもみないといけない。色んな事のせめぎ合いでした」
名越「うーーーん・・・苦しいところですね」

 

秋山「だから傷みにくい桃を作らないといけないなって。通年作業のやり方を変えたり、天気に左右されない美味しい桃を作るのにはどうしたらいいのかって試行錯誤したり。そしてその状態を継続できる技術も必要。だからこそ産地としてのスキルアップが大切なんです

 

 

だから「稼げる農業」に。

秋山しんどい、儲からない、安定しない。それじゃ新たな担い手は入ってこない。そもそも生産を安定させていかないとお客さんが離れてしまうし、いつか岡山の桃が無くなってしまうんじゃないかっていう危機感がありました」
名越「担い手不足はどこの産地も喫緊の課題ですよね」
秋山「お客さんの心をしっかりつかんで、かつ栽培や経営が安定していたら若い担い手も入ってきてくるんじゃないかって。そこまでの段取りは組合長としての僕の中の条件だったんです」

 

そして今年、新規就農するのが岡田幸久さんだーーーー

 

 

岡田「もともとサラリーマン家庭で全然農業とは関係なかったんですけど、前の仕事を辞めた時に秋山さんに声を掛けてもらって。この組合は色々な活動をしていたし、後世に繋いでいこうという姿勢に興味を持ったんです。とはいえ、1年間くらい本当に悩みましたね」
名越「大きな決断、ですもんね」
岡田「そうですね。そもそもやったことがないし経営についてもわからない。だから本当にやっていけるのかなって」

 

名越「新規就農の場合は特に周りのサポートが重要ですね」
秋山「そうですね。畑も無いですからね。岡田の2年間の研修が決まった段階で、使えそうな耕作放棄地を確保してみんなで開墾したんです」
岡田「ぶどう畑の耕作放棄地でしたね」
秋山「跡継ぎがいなくて放棄されている畑がすごく多いんです。荒れた畑の開墾は本当に大変です。でも将来的に拡大していくことを見据えて確保していってます」

 

 

名越「実際に農家になってどう感じていますか」
岡田「桃って可愛いなって(笑)自然の中で作業して他の農家さんの話も色々聞けて楽しいなって。そう感じてます」

 

 

やり方次第でお金になる。

農業はお金になるまでの道のりが長いーーー
新規就農を希望している人が躊躇してしまう最も大きな理由だろう。

 

佐伯「桃って5年たってようやく大きくなるんですよ。だからお金になるまで時間がかかる。でもここなら小さい桃でも買い取ってもらえるんです

 

名越「そうか!ここだからそれが出来るんですね!」

 

秋山「そうなんです。だからJAに全量出荷という体制を作ったんです。きちんとこちらの要望も伝えられる対等な関係でいるために
名越「うんうん」
秋山就農5年目にやっとお金になるのと3年目に桃が小さくてもお金になる、この差はかなり大きい。元々畑の無い岡田みたいな新規就農者は来なくなっちゃいますからね」

 

 

名越「佐伯さんは元々おじいさんが桃農家で、規模を縮小していく段階で受け継いだんですよね」
佐伯「はい。売上最盛期の半分を切った状態でしたね(笑)じいちゃんは“もう農業はせんでええ”って言ってたので。でもやるからにはじいちゃんを超えたいって思って畑をさらに買って植え付けして。面積では超えました(笑)!」
名越「すごい勢いですね(笑)!」

 

秋山「新規就農者だけじゃなく、佐伯みたいに元々畑があったとしても木を植え替えた後しばらくお金にならなかったら産地として強くならない。だからこそ今の体制って大事で」
名越「全て、これらを見据えた上での土台作りなんですね」

 

秋山若い人がどんどん入ってきて産地が元気になると町の人も活気づきますしね。産地として応援してくれる人が増えると新規就農者も入ってきやすいですし」
名越「いいサイクルですね」

 

佐伯「こっちがやりたいことが実現できる場があるって大きいんですよね。先輩も近い存在で何でも相談出来る。失敗しても怖くないって思えるからこそ色々チャレンジ出来るんです」

 

秋山「やりたいと思ったら動くべきだと思う。それを許してくれた先代の存在って僕の中で大きくて。だから僕もそうしてる。若い農家のチャレンジを地域全体で応援できるようにしていきたい。そのための土台はしっかり作りますから」

 

 

秋山「とはいえ、動きすぎて産地つぶしちゃいけないんですけどね(笑)」
名越「みなさん、エネルギーの塊ですからね(笑)本日はありがとうございました!」

 

未来に何を残したいのか?
そのために今、何をすればいいのか?
自分に任された役割は何なのか?

 

既存のルールに納得がいかないのなら、作ってしまえばいい。
やり方はいくらでも見つけていける。自分たち次第で未来は変えていける。

 

そんなさわやかな味わいの残るインタビューだった。

 

 

総社もも生産組合の情報はこちらをチェック
https://www.facebook.com/soujamomo/

 

 

 

(取材・文・構成・イラスト 名越涼子)

 

 

名越涼子(なごし・りょうこ)
フリーアナウンサー。香港出身。
福井、愛知のテレビ局のアナウンサーを経て独立。
幼い頃見た田んぼの美しさに感動し“農”に興味を持ち始める。
農作業着ファッションショーや農業団体の発信媒体を手掛けるなど
独自の切り口で“農”を発信。
他、メディア出演や講師業、コラム執筆など多方面で精力的に活動中。