旬八青果店に旬八キッチン!食農業界に変革を起こした“売れる八百屋”の作り方!そこにこめられた、圧倒的な情熱とは?農業ベンチャー《アグリゲート》の登場!

 

 

こんにちは♪フリーアナウンサーの名越涼子です。
先日、農林水産省の《農業における働き方改革検討会》に有識者として参加してきました。

 

 

既存のルールや“これまでの当たり前”に新しい血液を流していくのって並大抵のことじゃない。ましてやそれが「詳しくは分からないけど、昔からそういうものだったから」というものなら、なおさらだと思うんです。

 

特に農業という分野においては“これまでそうだったから”とか“農業は儲からない”という考えが根強い。でも。でも、ですよ。変革の波は確かに来ていて、新しいやり方を実践している人も頭角を現し始めています。会議ではそんな発見がたくさんあります。

 

今回登場するのは、まさに食農業界の常識に変革を起こした企業。

 

《新鮮 美味しい 適正価格》をコンセプトに八百屋の“旬八青果店”、総菜や弁当を販売する“旬八キッチン”を都内に11店舗展開する、アグリゲート

 

 

一般的な八百屋の売り上げは、ざっくり言うと月/100万円が平均。そんな中で、アグリゲートは驚くべき基準を設けています。
なんと旬八青果店は月/600万円、旬八キッチンは月/1000~1200万円。その売り上げに達しない店舗は撤退か移転、と決めているそう・・びっくり!

 

一体全体、どうしてそんなことが可能なのか?
アグリゲートの左今克憲さんに、直撃です!


 

だから、儲かる。

名越「売り上げの基準、高くて驚きました・・!」

 

左今「普通に仕入れていたらどれだけ販売力があっても絶対に無理ですよね。生産・物流・製造・販売を一気通貫しているからこそ出来ることなんです

 

アグリゲートの強みは、アパレル業界におけるSPAのビジネスモデル(商品の企画から製造、物流、プロモーション、販売までを一貫して行うこと)を食農業界でも構築したことだ。その一貫した体制で、粗利率平均20~30%と言われる八百屋業態で50%という数字をたたき出している。

 

左今「50円で手に入れた野菜を100円で売ろうとしても運ぶのに50円かかったら利益が出ない。じゃ物流をどうにかしないといけない。いい陳列をするのには思いっきり仕入れる必要がある。となると、製造でもまわるようにしたい。これを組み立てたんです」

 

名越「いいものを作っていても物流というところでハードルを感じている農家さんもたくさんいます。個別にやり取りすると、物流コストがとんでもないことになりますもんね」

 

左今「そうですね。物流コストをいかに抑えるか。その戦略のひとつが、都心の狭いエリアでお店をかためることです
名越「そうか!運ぶのに効率いいですもんね」
左今「あと、僕らは世田谷市場の場外にセンターを作らせてもらっていて。その市場との関係づくりも大切にしています。市場の構造をちゃんと理解して、共存しながら自分たちのルールもきちんと伝える。時間をかけて築いてきました」

 

 

名越「市場との接点はどこからだったんですか?」
左今「スーパーの福島屋さんの青果コーナーを担当させてもらったのがきっかけですね。そこで市場の勉強が出来たのが大きかったです」

 

名越「市場の仕組みって煩雑そう・・実際はどうなのでしょう??」
左今「正直、市場関係者であっても構造を理解していない人もいる。それだけ流れがもう組み上がっているってことなんですけどね。ただ今は全プレーヤーが分かれ目にきています

 

名越「分かれ目、ですか?」
左今「“儲からない”“劣悪な環境だ”って言いながら農家も卸しも物流もみんな疲弊していってる。でもその中で市場を活用してやり方を変えていける人がどんどん飛躍してます。どんな変化にも対応出来るように構造を理解しておくことが大切なんです」

 

名越「なるほど!」
左今「あとね、市場の商品ってこだわってないっていう意見の人が多いんですけどそんなことなくて。ものすごくこだわっているものもあるんです。僕らは毎朝市場に行って新鮮な余り物”をちゃんと探すんです

 

名越「新鮮な余り物・・(笑)!新しい響きです」
左今「量販店さんなどでは2週間前くらいに値決めして仕入れる量を決めるんです。でも農産物って工業製品じゃないから足りなかったり余ったりする。そこで余ったものの中からお客さんが喜ぶものを買うようにしているんです」
名越「そういうことなんですね~」
左今「相場も分かるし、今どんなものが出てきているのかも勉強出来ますしね」

 

こうした市場からの仕入れをはじめ、産地直送のものから自社農場のものまで、状況に応じて揃えることができるのもアグリゲートの強みだ。

 

左今「今は農家さん100軒以上と取引しています。自分たちが野菜を仕入れている農家さんにちゃんと儲けてほしいから生産のオペレーションも踏み込もうとしています
名越「具体的にはどんなことなんですか?」
左今「生産技術のことはわからないけど、これくらいのもの、量を作りたいならこれくらいコストをかけよう!っていうことはマネジメント出来るのでコンサルしながらバイヤーをしてる感じです」

 

 

■“こだわりで買ってない

左今「実は旬八青果店を始める前、アグリマートという野菜の通販サイトを運営していたんです」
名越「へぇ~!」
左今「栽培方法にこだわったものを販売していたんですけど福島屋さんで対面販売して感じたのは、栽培方法はひとつの付加価値であって全てではないと
名越「と、いうのは?」
左今実際は新鮮で美味しくて適正価格の方が大切なんですよね。それはお客さんと話して感じたことで。有機のものを勧めても“こっちの方が美味しいからこっちでいいわ。だってこれもちゃんと作ってるんでしょ?”って」
名越「欲しいものと値段がマッチしていると感じるかどうか・・だから“適正価格”なんですね」

 

 

左今「福島屋さんで売っていた時って、日本一接客していたんじゃないかな(笑)お客さんって“何買おうかな”って考えながら来てるので話しかけたら半数の方は買ってくれるんですよね。この野菜、この値段じゃ今買えないですよ、とか、ここにこだわってるよ、とか」
名越「普通に買うだけじゃわからないことですね」
左今「そういったリアルな情報を伝えることに可能性を感じたんです

 

名越「それが今の八百屋スタイルに繋がっているんですか?」
左今「そうですね。こだわりって伝え方間違えると説教になっちゃうじゃないですか。八百屋っぽい感じだと接客しなくても怒られないし、叫んでる感じでも伝わる(笑)」
名越「確かに、違和感ないです(笑)」

 

左今情報をちゃんと伝える。かつ、相手が必要とする心地よい量で伝える。それが大事です。それに天気の話をするくらいの関係性だけど顔見知りにもなれるっていうところも八百屋ならでは、ですね」

 

僕がやめたら、終わっていた

わずか4年の間に出店と人材育成とマニュアル作りと戦略とを組み立ててきたアグリゲート。好調に成長し続けているように見えるアグリゲートにも、危機はあった。

 

左今「2015年が厳しかったですね。僕がやめる、って言ったら終わるっていう。構造自体が危ないんじゃないのって周りにも言われて。結局薄利な事業展開をしちゃってたんですよね。」

 

 

左今「1~3店舗くらいまでは、周りは“いいことやってますね”って言ってくれる。でも10店舗超えると“これどうなってるんですか?”って言う人たちがたくさん出てきて。社会的にいいことやってるけど、働いてる人はきついよねって雰囲気になってしまっていて」

 

そこからアグリゲートの改革が加速した。
物流コストなどを徹底的に見直し、事業そのものを筋肉質に。
社内でビジョンを共有するため、社員とのコミュニケーションに時間も費やした。独自の基準を設け、出店と退店の中で売り上げと利益を伸ばす方法を深く構築していった。

 

左今「今は11店舗ですけど、実は出店したり退店したりしたところが9店舗あるんです。つまり、4年間で20店舗出してるんですよ。この期間でこの店舗数の八百屋を出店してるって日本初だと思っています(笑)」
名越「聞いたことないですもんね(笑)」
左今あえて店舗数を増やさずにノウハウをためていったんです。どうやったら上手くいくのか、なぜ駄目になるのか。そこで培ったものを生かして、今年一気に8店舗出店します
名越「おお!満を持して、ですね!」

 

 

左今「あの時、全部やめていたら楽だったかもしれない。でも、これやりたいからやってるんだよねって。自分の全てを費やしてきたからやめたくないんだよなって自分と向き合えたんです。」
名越「その時、左今さんの根本を支えていたものって何だったんですか?」
左今「自分の“これ欲しい!”を信じたってところかなぁ・・何事もそうだと思うのですが上手くいってない時って周りは好き勝手言うんです。でもどんなこと言われても強烈に自分を信じて走り抜けられるかどうか、だと思うんですよね」

 

“不本意な都市の食生活を送るすべての人に豊かな食生活を”
アグリゲートの掲げる理念の裏側には、諦めずに走り続けた物語が、ある。

 

求められるのは、プロデューサー

名越「アグリゲートでは旬八大学を主宰していて、セミナーや講座を開いてますよね」
左今「そうなんです。この事業で培ったノウハウを伝えてます。若い人で八百屋をやろうとしてる人って、増えてるんです。食農関係者の方も受講されてますね。今後何かしら接点もあるかもしれないし、この業界に優秀な人材を増やしていきたいんです」
名越「優秀な人材、ですか」
左今「農業は食べてもらう人がいるから出来ること。食べる人のことを考えないと農業はやっていけないんです。今後はそういったマーケティングから販売までとりまとめ出来る人を育てようとしています。育成して、ゆくゆくは人材派遣も出来るように」
名越「全てを見られるプロデューサー的な人が今一番必要とされているんですね」

 

左今「食生活も食との接点も時代とともに変わっていく。携帯電話がそうだったように社会が変わればインフラも変わる。僕らは未来においしいをつなぐインフラの創造”をしていきたい。それが、アグリゲートのミッションです

 

 

未来に受け継がれていくものって、実は日々、目に見えないものすごい革新が行われていて。時代の流れに柔軟に合わせながら、あり方は変えずに、やり方を変えていく。
つまり“核”となる部分を繋ぎながら、“新しい当たり前”をつくっていく。その絶妙なバランス感覚は、諦めなかった人だけがつかめるものだ。

 

 

アグリゲートについてはこちら
http://agrigate.co.jp

 

旬八青果店についてはこちら
http://shunpachi.jp/

 

旬八大学についてはこちら
https://www.shunpachi-univ.com

 

次回は、も~もたろさんももたろさん岡山の桃を日本一に!
生産組合とJAがタッグを組んだ稼げる桃作りに迫る!

 

(取材・文・イラスト 名越涼子)

名越涼子(なごし・りょうこ)

フリーアナウンサー。香港出身。
福井、愛知のテレビ局のアナウンサーを経て独立。
幼い頃見た田んぼの美しさに感動し“農”に興味を持ち始める。
農作業着ファッションショーや農業団体の発信媒体を手掛けるなど
独自の切り口で“農”を発信。
他、メディア出演や講師業、コラム執筆など多方面で精力的に活動中。