名越涼子の緊急リポート!
もうすぐ始まる新生活。何する?どこ住む?どう生きる?
“移住はファッションじゃない”地域を発信し続けてきたTURNSと考える、これからの生き方・暮らし方。
こんにちは♪フリーアナウンサーの名越涼子です。
相変わらず農業や農に携わる企業の取材をしながら各地を飛び回る日々。
そんな中でしみじみ感じるのは、農業ひとつとっても生き方って本当に様々だということ。
環境が違うだけでこうも人間って違うのか。究極、仕事じゃなくて環境によって人間って変わる。生き方も、考え方も十人十色。
今って世界中の情報が入ってきて価値観が多様化して、人生の選択肢がものすごい勢いで増えてる。これまでになかった仕事もどんどん創られてきていて、きっとこれからも創られ続けるのだと思う。
「こう生きたら正解だよね」という定義そのものも、根底から変化・・・いや、もはや無くなった、と言っても過言じゃないのかもしれない。
だからね、その分、「自分らしさって何なのだろう」と悩む機会も増えたんだと思う。でも、こんなに「自分らしさ」を追求できる時代もないんじゃないかな、とも思うわけで。
何をして生きるのか。どこで生きるのか。自分の人生をどう生きるのか。
春ってそういうことと向き合うのにぴったりな季節ですよね。
今回の《私、ときめく、農業男子》は
4月の新生活、新スタートに向けた特別編【“農”も含めた、これからの生き方】
地域との繋がり方を伝える雑誌“TURNS”のプロデューサーの堀口正裕さんと共に、“地域”と“これからの生き方”について考えます。
■移住は、ファッションじゃない。
堀口「最近は移住そのものがファッションのようになっている感じもありますが、本質は違う。地に足のついた雑誌を作っていきたいんです」
そう話し始めた堀口さん。これまで、およそ20年に渡って地域のことを発信し続けてきた。

名越「移住って一過性のものじゃなくてそこで生活していく、ということですもんね。TURNSさんを読んでるとまるでそこを実際に訪ねているかのような、地域の“リアル”を感じます」
堀口「土の香りがするメディアって言ってくれる人もいます(笑)みんなに光を当てたいんです。でもね、地方が全てではないし絶対ではない。仕事も地域との関わり方もこんなにあるんだよって伝えることで選択肢を増やしたいんです」
名越「とっても共感します。“こうじゃなきゃいけない”っていう定義が様々な場面で変化している今、人生をどう生きるかの選択肢がものすごく広がっていますよね」
堀口「Uターン、Iターン以外にJターン、孫ターン、嫁ターンもあるんですよ」
名越「Jターン・・・孫、嫁?!そんなにターンがあるんですか(笑)」
堀口「Jターンは都心に移住した人が故郷の近くに戻ってくること。孫ターンは自分のおじいちゃんおばあちゃんのコミュニティーが出来上がっているところに戻ることで、嫁ターンは妻の実家に夫が一緒に住むことです」
名越「なるほど(笑)確かに、移住で大事なのはその土地のコミュニティーに入れるかどうか、ですもんね。一番は人間関係だとよく聞きます」
堀口「そう。だからすでに身内によってコミュニティーが出来上がってる方が移住しやすいんですよね」
名越「受け入れる側の人も、身元が分かってるから安心ですもんね」
堀口「独りよがりで自分勝手に入っていくのは駄目。今は誰でも移住ウェルカムの時代じゃない。SNSが発達して軽い気持ちで移住した人がたくさんいたけど大体失敗してる。だからこそ“地方はいいよ”って簡単に浮いたようなことは言いたくないんです」
名越「うんうん。それで、TURNS CAFÉというイベントやセミナーなどで伝えてるんですね」
堀口「そうです。TURNSに登場いただいた人と読者を繋いで実際の話をしてもらってます。移住は難しい面もあるけど、そこで生きている人たちから得られるものってたくさんあって」
名越「都市にはない力強さや生活力・・ものすごくパワフルですよね。農業取材しているといつも感じます」
堀口「そうなんです。僕も埼玉の狭山に住んで畑作業もしてますけど、どんなに仕事で疲れてても畑に行くと元気になる。何より豊かな価値の交換があって。自分が一生懸命つくった芋をお裾分けしたら軽トラを貸してくれたり。お金の価値じゃない有り難いものを交換し合えるんです」
名越「わ~!都心だとなかなか得られないものですね」
堀口「地域ならではの無償のコミュニティーってあって、それはたとえライバルであったとしても助け合える関係なんですよね」
名越「小さい頃ずっと香港に住んでいて夏休みになると日本のおじいちゃんのところへ遊びに行ってたんですね。で、“ご近所付き合い”ってすごいなぁ、って感じていました。お隣さんからのお裾分けに始まり、何かあったら駆けつけてくれる。あったかいなって」
堀口「正直、未だに排他的な地域もある。でもこのままだと消滅してしまうという危機感がある人も増えてきて“移住者と共に地域を作る”という動きも出てきています。“自分たちの地域にはどんな人が必要なのか”ってみんな真剣に考え始めてるんです」
名越「受け入れる側の人たちの意識も変化してきてるんですね」
■3.11で変わった、人生観
堀口「20年くらい前までは50代、60代をターゲットに“第二の人生”というコンセプトで雑誌をつくっていたんです。でもメインの人生を豊かに生きられるようにしたい、ということでターゲットを20~40代前半にガラッと変えました」
名越「きっかけはなんだったんですか?」
堀口「東日本大震災です。あれから、生き方や暮らし方を尊重する人が若い年齢層で増えた。都市のもろさに気付いて、何が自分にとって大切なのか。また“自分次第で生き方は変えられるんだ”っていう想いが若い人たちから噴き出したと思うんですよね、きっと」
名越「確かに私自身も周りも、“どう生きるのか、誰と生きるのか”ということをこれまでに無いくらい考えました」
堀口「うちの会社でも一年間執筆活動を自粛して、これからの日本に何を伝えていくのか徹底的に話し合ったんです」
名越「そうだったんですね」
堀口「地方に行くと色んな仕事をしながら生きている人がたくさんいる。みんなが先生になってくれる。生きていく上で学ぶ大事なことがたくさんある。そんな人間らしい生き方をするための選択肢を若い人たちに伝えたいと」
名越「社内の反応はどうだったんですか?」
堀口「いや~最初は大反対ですよ(笑)これまでの読者を手放すのかって。でも最後は想いで押し切りました(笑)」
■さて、あなたはどう生きる?
名越「移住やコミュニティー作りが成功しているところってどんなところがあるんでしょう」
堀口「鳥取県の鹿野というところは今、若い人たちがたくさん移住してますよ」
名越「へ~!何か移住しやすいポイントがあるんですか?」
堀口「個人的にも印象的だったのが鹿野のまちづくり協議会で、新しいまちづくりに取り組む地元の方が言っていたことで。“いつ来ても、いつ去ってもいい。鹿野で人生に大切なものを何か持って帰ってくれればいい”って」
名越「絶対に一生ここにいて!じゃないんですね。まちに思い入れがあるほど言えなくなりそうなのに、すごい。移住する側も変にプレッシャーを感じなくていいんだって思えそう」
堀口「移住、って言葉も重いじゃないですか。でもそれくらいライトな方が人は集まるんですよね」
堀口「あとね、兵庫県の加古川で映画が出来たんです」
名越「映画、ですか?!」
堀口「地域の人たちが自分たちでそのまちの良さや地域資源を見直して、それを脚本に反映する。役者さんと、地域の人にも出演してもらって。TURNSは後援させてもらったんですけど、これが好評で。地域が本当にひとつになった。これを全国で作っていきたいなって」
名越「自分たちにとっての“当たり前”が“宝”に変わる。しかも映画というカタチになる。お子さんが出演するとなれば家族親戚、総出ですしね(笑)いや~本当に色んなやり方があるんですね」
堀口「あとね、TURNSとしても地域で仕事を生み出していきたいんです。去年から地方在住のライターさんに執筆してもらってますし、今後はデジタル系の大学と提携して地域の情報を発信出来る人材を輩出していこうと思ってます」
名越「今はどこにいても世界に発信出来ますもんね」
堀口「そうですね。これからは地域とのつながりを当たり前のように認識していく時代になる。TURNSに関わることでそんな人が増えることを目指します」
名越「仕事も、環境も、暮らし方もあらゆることの定義がなくなっていく。この流れ、加速していきそうですね。だからこそ、たくさんの“リアル”に触れて一番自分にしっくりくる生き方を見つけることが本当に大切ですね。堀口さん、ありがとうございました!」
雑誌《TURNS》には3つの意味がある。
Iターン、Uターン、という“ターン”に、人生の転機というターン
そして次はあなたの番ですよ、という意味のターンだ。
☆TURNSの詳しい情報はこちらをチェック☆
https://www.turns.jp/
次回は、都内で話題の「旬八青果店」や「旬八キッチン」を展開するアグリゲートが登場!農業ベンチャーのあくなき挑戦と怒涛のストーリーを直撃インタビュー!
(取材・文・イラスト 名越涼子)
(*予定を変更してお送りしました)
名越涼子(なごし・りょうこ)
フリーアナウンサー。香港出身。
福井、愛知のテレビ局のアナウンサーを経て独立。
幼い頃見た田んぼの美しさに感動し“農”に興味を持ち始める。
農作業着ファッションショーや農業団体の発信媒体を手掛けるなど
独自の切り口で“農”を発信。
他、メディア出演や講師業、コラム執筆など多方面で精力的に活動中。