ネギジェニックに、芸″農″人?! 一度会ったら忘れられないネギ農家が登場!勢い・エネルギー、超絶級!
新年明けまして、おめでとうございます!
名越はラジオのニュース読みから新年がスタートしました。
新年って心も身体も新たなエネルギーが満ちていくようで本当にわくわくします♪
今年も畑を駆けめぐりますよ~!
そうそう、去年12月から農林水産省主催の会議【農業分野における働き方検討会】に有識者として参加させていただいています。
全国各地、取材してわかった“現場の声”を国に届けてきます!
と、いうわけで今年も≪私、ときめく。農業男子≫をお楽しみ下さいませ~♪
その農業男子との出会いは餃子だった。
「名越さん!とにかく美味しい餃子があるから食べてほしい!」
知り合いから突然の餃子食べてオファー。
そこまで言うならば、と一口いただいて思わず目を見開く。
「美味しい・・!なんですかこのネギ餃子!美味しすぎる!!」
その餃子の名は”寅ちゃん餃子”
日本一のネギ師こと、寅ちゃんのネギがたっぷり入っているとのこと。
「日本一・・・と、と、とらちゃん?!!私、彼に会いたいです!」
すぐさまアポを取ってもらい、山形へと向かった。
■前職→7社を束ねる経営者
真っ赤な帽子に真っ赤なTシャツ。
そこに大きく書かれた「初代葱師」の文字。
うん。緑色のネギ畑にとても良く映える。
「お~!よく来たね~!」
大きな寅ちゃんスマイルで迎えてくれた農業男子・清水寅さん。
寅と書いて「つよし」と読むが、みんなからは「とらさん」の愛称で親しまれている。
「あ!ちょっと待ってね!」
移動中、何かを見つけたのか突然寅さんが走り出す。
おもむろにネギを2本取り出し、イチョウの木の下に並べ始めた。
「ちょっと座ってみて!そうそういい感じ!撮るよ~!」
「ほらこれが、ネギジェニック!」
・・・・ね、ね、ネギジェニック!?
フォトジェニック、もとい、ネギジェニック!!(笑)
第一印象から強烈。間違いなく、今年忘れられない農業男子になりそうだ。
「3年で日本一になるって決めたのよ」
茶目っ気たっぷりの笑顔で寅さんが話す。
山形でネギ農家を始めて今年で7年目。
宣言通り、3年かからずにネギの栽培面積、新規就農者最短で日本一に輝いた。
さらにはネギの最高糖度21.6度を達成。
ネギの出荷量は年間5万ケースにおよび、予約でいっぱいという超絶な人気ぶりだ。
そんな寅さんの出身は長崎県。農家になるまでは東京で7社の会社の社長を任されていた。
・・・・一体、なぜ農業をしようと思ったのか。
「ある時、JAで働いてる親戚から“とら、農業やらないか?農業界、元気ないんだよ”って言われてね。社長だった時、オーナーから業績の悪いところを任されて全部業績あげたのよ。だから上手くいってないところの話を聞くと血が騒いじゃってね(笑)」
根っからのチャレンジャーである寅さんも、さすがに農業界に足を踏み入れるかどうか一年じっくり考えた。
「社長だった時って、オーナーがいるから失敗出来なかったんだよね。でも自分でゼロからやるなら失敗も出来る。それ含めての楽しい人生だから」
畑はどこでもよかった。ならばと、奥さんの故郷である山形で「ねぎびとカンパニー株式会社」を設立した。
「ネギってどこでも味変わらないって思ってたから、じゃあ美味しいネギを作ってみようと。でも何から始めていいか分からない。ダブルのスーツで近所の農家さんのところに行って“ネギで日本一になりたいんですけど”っていうところからスタートでしたね(笑)」
教えてもらうために毎日ノートと鉛筆を持って勉強しに行った。
土も天気も思い通りにならない。今まで歩んできた道のりとは何もかもが違う世界。
チャレンジしては失敗し、師匠に怒られての繰り返し。
夜中まで草取りをして指が疲労骨折をしたこともある。
「その時はもう夢の中まで草取りよ(笑)手は腫れて痛いしね。出来ない自分が悔しくてもう何百回も泣いたよね」
怒涛の勢いで突き進んできた数年間。
圧倒的な熱量を持って続けてきたからこその今の寅さんのネギなのだ。
しかし経営のプロではあるが、農業は全くの素人だった寅さん。
どうやって美味しいネギを作りあげたのだろうか。
「ネギに聞けば分かるのよ。だって家族よりもネギと会話してたからね~(笑)」
また茶目っ気たっぷりに、寅さんが笑った。
■作るだけが農業じゃない。
寅さんの主催するネギジェニックな【ネギ鍋】を楽しむ会に参加させてもらった。
寅さんの育てたネギがこれでもか!と投入された迫力満点の一品。なんとも強烈な鍋に思わず笑ってしまう。
「農業の楽しみ方ってひとつじゃないんだよね。世の中のブームって何だろう、農業と掛け合わせたどうなるんだろうっていつも探してる。イベントも含めて農業なんだよね」
そう。そうなのだ。農業ってたくさんの切り口がある。
作る、はもちろんのこと、食べる、遊ぶ、学ぶ。そういったどれも農業だと思う。
寅さんの仕掛ける《エンタメ農業》
決められた区画でいかに早くネギを掘り終えるかを競う“ネギ掘り王決定戦”に
日本一長いネギマ作り対決。大人も子供も夢中になって楽しめるものばかりだ。
「突然、農業しませんか?って言うのは突然、結婚しませんか?って言ってるのと一緒。
そんなの無理でしょ(笑)だからこそ農業で遊ぶ。遊びながら現場を見るって順番が大事」
何のために、誰のために発信していくのか。
企画する時はあくまで冷静に、段階を踏みながら突き詰めていく。
どうしたら人の心が動くのか。
経営者として培ってきた寅さんの腕の見せ所でもある。
■芸能人=芸農人の誕生!
「未来の農業のために必要なものって何だと思う?」
寅さんがグッと真剣な表情になった。
「農業人口はどんどん減ってきてこのまま進んでいくとどうなるのか、もう目に見えてるんだよね。そのために必要なのは芸能人ならぬ、芸“農”人なんだよ」
芸・・・農・・・人・・・!!!
ユニークな発想に胸が高鳴る。
「農業人口を増やすためには農業界のスーパースターが必要。メディアでどんどん発信して、各地の学校に農業部を作って農業を身近なものにする。国を動かすためには発言権がないといけない。知名度が無いと発言権が持てない」
「そのひとつの切り口が芸農人だと思うんだよね。誰もやらないからまず自分でやる。自分がやることによって“自分にも出来るかも”って思う人を増やしたい」
その寅さん。宣言通り、“芸農人”として芸能事務所と契約。
メディアで寅さんの活躍を見られる日も近い。
「あとは自社を世界一楽しい会社にすること。今の時代に必要なことって昭和の時代にあったような和気あいあいとした空気感だと思うんだよね。農業やって良かったって言ってもらいたい。じゃあどうしたらみんなが楽しくなれるのかなって毎日考えてる」
「農業で月給50万円にするとか農業はちゃんと稼げるんだってみせて全体を底上げしたい。農業界のモデル会社になれれば自然と人も集まる。世界一小さい会社が世界一楽しい会社にしていく。このストーリーも面白いじゃない」
そうか。そうだった。
自分次第でどんな人生も描いていけるのだ。
どんな未来を創るのか。どんな自分のオリジナルストーリーを描くのか。
想いは叶う。
でもそれは自分を信じて行動した人のみが手に入れられる、人生を豊かにするわくわく切符なのだ。
☆ねぎびとカンパニーの情報はこちら☆
http://negibito.com/
次回は山形のレゲエ農家が登場!不可能と言われた果実作りに挑戦する農業男子。農業はレゲエに教わった?!その神髄に迫る!
(取材・文・撮影・イラスト 名越涼子)
名越涼子(なごし・りょうこ)
フリーアナウンサー。香港出身。
福井、愛知のテレビ局のアナウンサーを経て独立。
幼い頃見た田んぼの美しさに感動し“農”に興味を持ち始める。
農作業着ファッションショーや農業団体の発信媒体を手掛けるなど
独自の切り口で“農”を発信。
他、メディア出演や講師業、コラム執筆など多方面で精力的に活動中。