「たとえ世界から自分がいなくなったとしても・・・」
農業王国・北海道は芽室町で始まった壮大なワイナリー計画!
ロマンあふれるその物語をリポート!

 

結果は“今すぐ”出ないだろう。

 

そのチャレンジが良かったのかどうか、
わかるのは50年後、100年後かもしれない。

それでもやる。
可能性が少しでもあるならやる。

たとえ自分がこの世界からいなくなったとしても
きっと、その想いは受け継がれていくから。

そう信じて進む、勇気ある人々の物語。

 

・・・・ってものすごいロマン溢れるやないかーーーーーーい(∩´∀`)

 

人生に夢を、ロマンを。

聴く人の心までもときめかせる物語が北海道芽室町で、すでに始まっているのだ。

こうしちゃいられない!
早速現場へ直行した。

 


可愛らしい実をつけたブドウたち。
太陽の日差しをたっぷり浴びて美味しそうにすくすく育っている。

「100年後にさ、日本のワインって美味しいよねってなったらいいよね」

そう話すのは芽室町で農業を営む菊地英樹さん。
24haの広大な畑の一角で一昨年からブドウを栽培している。

 

 

北海道・芽室町。
風光明媚な大自然が広がる日本有数の農業王国である。
(詳しくは前回の農業リポートをチェック!)

 

ここで100年越しの壮大なプロジェクトが始まっている。

 

それがMEMUROワインヴァレー構想」

 

2019年、芽室町にワイナリーを建設。
芽室産のブドウを使ったワインを醸造し、
ワイナリーを通じたまちづくりで地域活性化を目指す計画だ。

 

その構想に共感した有志でつくるMEMUROワインヴァレー研究会》が発足したのが2015年12月。

メンバーはおよそ40人で、菊地さんをはじめとする農家やパン屋、不動産会社、町議員など顔ぶれは様々だ。

 

左:菊地英樹農場の五十嵐莉那さん 右:十勝里山デザイン研究所の惠田喜歩さん

 

――――行政主導ではなく、民間主導で立ち上がったんですね。

「研究会には面白いまちづくりに関わりたいっていう人たちが集まってきています。自分たちのまちが新しいことで盛り上がっていく、そしてそんなまちづくりをみんなで一緒になって取り組める。そこに面白味を感じているんじゃないかな」

 

実は北海道にはおよそ30のワイナリーがあり、そのパイオニアが《十勝ワイン》である。

同じ十勝地方の池田町が1963年、日本最初の自治体ワイナリーとしてスタートさせた。

 

「池田町は50年かけてワイン文化を育ててきた。自分たちも芽室町の産業・文化をつくっていきたい。たとえ50年、100年かかったとしても」

 

 

―――日本のワインの代表的な生産地って山梨県だと思っていましたが、北海道も盛んなんですね。

「温暖化の影響で変わってきてるんです。スイカやメロンなどは昔、南の作物だったけど今やマンゴーも北海道で育てることが出来ますからね。そうそう、北海道ってワイン用の加工ブドウの生産量ナンバー1なんですよ!」

 

―――え!そうだったのですねー!

「その中でも芽室町はブドウ作りに適した地だと言われているんです。今は研究会の農家13軒で合わせて5ha分のブドウを作っています。え?ブドウ作りですか?みんな初めてですよ(笑)」

 

 

「最盛期は2500戸だった農家の数も今は600戸まで減ってしまった。今のままでは停滞してしまうだけ。だからこそワイナリー計画のような新しい産業が必要なんです。それは農家だけじゃなく、町民にとってもね」

 

芽室町の町民みんなが自慢できるようなワイナリーづくり、まちづくり。
たくさんの人と想いが広がりながら着実に前へ前へと進んでいる。

 

 

そもそもどのようにこの壮大でロマンある計画が立ち上がったのか。
立案者である中島セイジさんに直撃インタビュー!

「テーマは農業改革と、まちづくりです」

 

――――農業改革、ですか?

「自由貿易はこれからどんどん進んでいく。そうすると農協あっての農業はますます厳しくなっていきます。だからこそ農業にどう付加価値をつけていくが大事なんです。それも、海外のものと比較して価値あるものでなければいけない」

 

―――そこで、ワインなのですね。

「そう。つまり付加価値づくりは六次化。付加価値づくりと六次化とまちづくりをどう掛け合わせていくかなんです。六次化の代表的なものと言えば、ワイン。分かりやすいし世界共通ですからね」

 

芽室町出身の中島セイジさん。
大学から上京し、27歳で独立。経営デザイナーとして多くの企業を支援してきた。

 

そんなセイジさんが60歳を迎え、自身の会社を後継者へ受け渡した時
ふと故郷の光景が浮かんだという。

“芽室町に恩返ししたい”
そんな想いで≪株式会社十勝里山デザイン研究所≫を設立した。

 

 

「僕が土地を買って農家に頼んでブドウを作ってもらったとしたらまちづくりにならない。みんなが自分でやろう!って思わないと。どうやったらブドウが美味しく育つのか、どうやったら付加価値がつけられるのか。そう考えてもらうことも含めてのまちづくりなんです」

 

――――それぞれが主体になって、初めて“まちづくり”が出来るんですね。

「ただブドウを作って終わり、じゃない。海外に対抗できる一流のものづくりってどんなことなのか。ワイン作りを通して農家も町民も六次化の発想を覚えて欲しいんです。芽室ブランドってこうやって作っていくんだよって」

 

――――最終的にセイジさんが目指すものって何なのでしょうか。

「今もうけようとか、注目されよう、なんて思っていない。孫子の代に何が残せるか。それだけなんです。僕らがいなくなってもワイナリーは残る。何よりチャレンジしたという“挑戦の志”が残る。だからこそ地球規模で支持されるものを、みんなでつくっていきたい」

 

時代が変わっても、変わらず伝わっていくもの。
カタチとして残るもの。想いとして残るもの。
それは何にも代えがたい財産だ。

 

 

育ててきたブドウを使って、今年いよいよ醸造過程に挑戦する。

 

「色々な仕掛けをしたいんです。自分の生まれた年度のワインを飲む、とか中学三年生に収穫体験してもらって、20歳になったときに乾杯、とかね。それって、夢があるじゃない」

 

菊地さんの目がきらっと輝いた。

《MEMUROワインヴァレー構想》はたくさんの人の想いと希望をのせて走り出している。

 

わくわくのエキスがたっぷり注ぎ込まれたワインは
きっと“美味しい”をも超えてしまうほど特別な味わいに違いない。

 

☆MEMUROワインヴァレー構想はこちらをチェック☆
十勝里山デザイン研究所HP
http://www.satoyama.love/

 

 

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(取材・文・撮影・イラスト 名越涼子)

名越涼子(なごし・りょうこ)
フリーアナウンサー。香港出身。
福井、愛知のテレビ局のアナウンサーを経て独立。
幼い頃見た田んぼの美しさに感動し“農”に興味を持ち始める。
農作業着ファッションショーや農業団体の発信媒体を手掛けるなど
独自の切り口で“農”を発信。
他、メディア出演や講師業、コラム執筆など多方面で精力的に活動中。