フリーアナウンサー名越涼子の「私、ときめく、農業男子」vol.6

-農業男子 vol.6-
田植えでモヒカン体験?!
“農業の価値”そのものをデザインする
アイデアマン農業男子のユニークな発想に迫る!

 

 

【あなたも、田植えでモヒカン体験しませんか】

こんな言葉を投げかけられたらどうだろう。

モヒカン頭で田植え?

田植えしながらモヒカンにセットしてくれるの?

え?え?田植えで・・・モヒカンって一体何なの?!!

ちょっとの不安と“何かが起きそうな”期待で頭も心も支配されることと察する。

まさにDON‘T THINK,FEEEEEEEEEEEEL

(感じなさい!!!!!)

【田植えでモヒカン。しかも、モヒカン無料!】

斬新な発想で農業を変えようとしている農業男子が、三重県にいる。


モヒカン頭のその農業男子は、間違いなく忘れられない存在になりそうだ。

■絶対に、早く家を出る

「バブルの恩恵を全く受けなかったんです」

そうおもむろに話し出した今回の農業男子・楠木一徳さん。

代々続く米農家の5代目。柔和な雰囲気の農業男子だ。

「バブルの時は小学生。周りの友達は海外旅行したり、何か買ってもらったりしていたんですけど、農家の我が家は全く何も変わらなくて。だから早く自立して家を出よう、って決めていました(笑)」

そう笑う楠木さん。

大学を卒業してからはプロダクトデザイナーとして働き、主にオーディオ関連のデザインを手掛けてきた。

「みんな、オーディオそのものが欲しいわけではなくて“音楽を聴く時間や体験”が欲しいんです。それを製品としてデザインしてきました」

「僕、ドラゴンボール世代で、作者の鳥山明さんの描くラジカセやバイクが大好きだったんです。鳥山さんの作品を読んでいるうちに自分も自然と絵を描くのが好きになって。」

――――それでプロダクトデザイナーに?

「暮らしの不便を工業製品で解決して、世の中がより便利になる。そんな価値のある仕事や生活に関わるものづくりができるといいなって思ったんです。」

地元を離れ、12年間プロダクトデザイナーとして専門性を磨いてきた楠木さん。

家業について考えた大きなきっかけは、東日本大震災だった。

「自分一人ではなくて、子どもも親も含めて家族丸ごと幸せになるカタチって何なんだろうってじっくり考えましたね。このキャリアを生かして地域や家業に何か出来ないか、デザインというアプローチで貢
献出来ないかなって」

そうして、楠木さんは農家としての第一歩を踏み出した。

 

■デザイン思考の農業改革

家業に戻ってからのこの一年は、とにかく農作業をしながら現場をつぶさに観察してきた。

「これまでのやり方を否定するつもりは全く無くて、むしろそうして両親に育ててもらったから感謝しているんです。だからこそこれからはデザインの考え方で農業の価値を提案したくて。」

農業に従事していなかったからこそ見えてくる課題がある。

「現状を改善するためには分析して数値化していくことが大事なんです。経験則や文化を踏襲しているだけだといずれ疲弊していく。でも農業って数値化しにくいことがすごく多くて。“これってこういうものだよね”っていう概念で続けられてきたことの最たるものが農業だと思うんです。」


「農業を分析した結果、手つかずのサービスや価値があることに気付いて。

農業=生産=ものを作って売る、だけじゃない。今あるものをちゃんと使って、編集して価値を出していく。デザインの力で“こんなことも出来るんじゃないんですか”って問いを投げかけたいんです。」

楠木さんのあくなき挑戦が始まった。

 

■田植え体験できます。しかも、モヒカンセットです!

思わずハッとした。

 

「モヒカンがセットの田植え体験イベントを開催したんです」


ある意味、フォトジェニック。

苗にこれほど斬新な活用法があったとは。

なんら特別なものではないはずのに、一瞬にしてワクワク感が倍増する。

「農業体験したい、という人にただ“田植え体験できますよ~”と提案するのではなくて、“苗モヒカンとセットで出来ますよ~”って(笑)今あるものを最大限生かしたカタチです」

楠木さんの田植えに対する見方は、あくまで“プロダクトデザイナー”である。

「例えばなんですけど、みんな洗濯機が欲しいのではなくて“洗濯という機能”が欲しいんですね。じゃあ“田植えの機能”ってなんだろうって。それは人同士が交流するとか米作りの現場を知る、最終的にお米を食べることなのかなって思って。」


「食べる時間や場所を変えるだけで、同じものであったとしても味わいが違ってきます。

家で炊飯器のお米を食べるよりも、外で楽しく農作業した後に直火で炊いたお米をみんなで食べると美味しさが増しますよね。そういった“絶対に美味しくなる要素”を並べてセットにして提供する。これがデザインする、ということです」

新しいものを取り入れなくてもいい。新しい切り口で今の状況を生かせばいい。

「そういう繋がりが出来ると“ここでお米買おうかな”って思ってもらえるんじゃないかなって」

体験の後までも、完璧にデザインされている。

 

■畑は、資源です。

楠木さんのアイデアはとどまることを知らない。

「畑キャンプ事業を考えています。」

――――畑でキャンプ、ですか?

「モノで対価を得るのではなくて、畑という資源を持っている農家が出来るサービスって何かなって思って。じゃあ畑というフィールドをキャンプ場に見立てて農業体験をしたらどうだろうかと。今って生産の場、農業体験、キャンプとバラバラに提供されていますよね。それらをひとつに出来ないかなって思って。」

実はこのプラン、三重県庁の主催するビジネスモデルコンテストで優秀賞をもらっている。

「畑の維持と震災の備えが一緒に実現できてビジネスとしても成り立つんじゃないかなって。畑の使用料と農業体験料を農家へ渡す。キャンプに来た人たちはナイフを使ったり穴を掘ったりしてレジャーしながらサバイバル力を身につける。何時間もかけてキャンプ場に行かなくても、地域の中で出来ると思うんです。」

「畑キャンプというビジネスモデルを全国に広げていきたい。遊びの選択肢のひとつになって、家族や仲間の絆が深まったり農業を知ってもらう機会になったりしたら嬉しいですね。守り続けなければいけないものって家族や環境だと思うから。」


楠木さんのユニークなアイデアで農業がこれからどのようにデザインされていくのか。

今はまだ想像もつかないことで、私たちをあっと驚かせてくれそうだ。

 

 

☆楠木さんの情報はこちらでチェック☆

http://kusuki-farm-store.com/

2017年度のお米は9月末に販売予定♪

次回は、手もみで5時間?!

伝統の伊勢茶を受け継ぐ自称“お茶バカ”の農業男子が登場!その美味しさに悶絶です(*´ω`*)

(取材・文・撮影・イラスト 名越涼子)

 


名越涼子(なごし・りょうこ)
フリーアナウンサー。香港出身。
福井、愛知のテレビ局のアナウンサーを経て独立。
幼い頃見た田んぼの美しさに感動し“農”に興味を持ち始める。
農作業着ファッションショーや農業団体の発信媒体を手掛けるなど
独自の切り口で“農”を発信。
他、メディア出演や講師業、コラム執筆など多方面で精力的に活動中。

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