「地元の道の駅に置いてもらえるだけでいい。それだけで十分。」
このプロジェクトを始める前に、少量多品種で様々なトマトを栽培している農家さんにお話を伺った際、おっしゃっていた言葉です。

 

その時、私はなんだか複雑な気持ちになったのを覚えています。

 

後継問題、物価の上昇、都市部への人口の集中、
さまざまな課題に直面している農家さんがたくさんいる中で、
農家さんと消費者をどうにかつなげようというプロジェクト、仕組みづくりは多くのところで盛んに取り組まれています。
そして、それが意外とものすごく難しいことであることもなんとなくわかってきました。

 

そんな折にふとしたきっかけで出会った、広尾でマルシェを開いているTerrace Marcheのみなさんのお話がすごく面白かったので、ご紹介させてください。

 

「都心で地方の野菜を売るためにマルシェを行うと一口に言っても、農家さんは郊外から都心にこなきゃいけなかったり、そのための準備をしなきゃいけなかったり、こなかったとしても、輸送のコストがかかったりと、意外とみなさん腰が重くなりがちだったりします。

 

私たちがマルシェを始めたきっかけは、ちょっと変わっていて、シンプルに『自分たちが美味しい野菜を食べたい』という思いで、美味しい野菜を丁寧に作っている農家さんから野菜を買ってきて、みんなで食べ始めたんです。

 

実際に野菜を買ってみんなで食べようと思ったら、どうしてもまとめ買いになってしまい、美味しい野菜たちが余ってしまった。余ってしまって無駄にするのはもったいないから、じゃあ売って、みんなに美味しさをおすそ分けしようかと。荷捌き所といったら言い方が悪いですが、『美味しい野菜を食べたい!』それがきっかけです。笑

 

なので、マルシェをやろう!と手段が目的になっていたわけではないんですね。
もちろんこれが農家さんの課題解決につながれば、いや、つなげなくてはと強く思っています!」

 

私はこの話を聞いた時に、すっと胸につっかえていたものがおりたような、なんだか不思議と納得できたような、ピュアな感動に近い感覚を覚えました。

 

農のソーシャル化。
つながること・つなげること自体を目的とせず、生活に即した形で、今のライフスタイルに見合ったやり方で、そしてなにより、皆がやりたいと思った気持ちを大切に、農をきっかけに人と人とをつなげていく。

 

私たちFARM PARK PROJECTは、そんな取り組みをたくさんこのプロジェクトで発信していきます。
時にはデジタルで、時にはリアルな場で。